最近は、英検やTOEIC の成績を参考に、大学受験の英語試験を免除するという動きが広がっているようです。まあ、確かに、英検やTOEIC で好成績なら、英語のテストなんてするまでもないでしょう。動きとしては自然なものだと思います。1
民間試験を活用する例
具体的にどんな動きがあるのでしょうか。読売新聞の記事を参考にチェックしてみましょう。
関西学院大では2016年度から、米国などの大学で留学生選抜に使われるTOEFL(120点満点)で72点以上、英検で準1級以上などの成績を収めていれば、大学入試センター試験を利用した入試で英語を課さない方式を全学部で始める。
TOEFL はなじみが薄い人が多いと思うので、英検準1級で考えてみましょう。
まず、英検準1級というと、高校生にはかなり難しいテストだと考えられます。というのも、英検2級が高校卒業レベルだからです。
しかも、英検2級は高校卒業レベルと言いながら、普通の高校卒業レベルだと絶対に合格できません。学校のレベルにもよるでしょうが、高校でかなり英語ができた人がやっと合格できるというくらいのレベルをイメージすると良いでしょう。
英検のサイトを見ると、準1級は「大学中級程度」とあります。その上で、出題目安として次のようなことが書かれています。
Eメールへの返信など実践的な英作文の問題が加わります。
「実際に使える英語力」の証明として高く評価されています。
「メールの返信など」とありますので、実践的な英作文の能力も問われるという事ですね。
はっきり言って、大学入試ではまともな英作文は出題されません。英作文が出題されない理由は色々あるのでしょうが、一つ大きいのが受験生のレベルです。大学受験生レベルだと、英作文を書かせてもまともには書けないのです。
その意味では、その英作文を出題目安にしている時点で、難しいテストだと言うのは想像が付くでしょう。
ちなみに、もう一つ、立命館大学の例も載っていました。
立命館大の国際関係学部では、300点満点の英語試験を課すが、このうち100点分は民間テストの成績に応じて80~100点とみなす方式を導入する。
こちらは、具体的にどんなテストを受ければいいのかは書かれていませんでした。もっとも、国際関係学部という事で、英語の能力が求められるような学部であるのは間違いありません。関西学院大学の例から考えても、おそらく、それなりに高い基準が設けられているのでしょう。
記事のタイトルの「脱『受験英語』」はちょっと疑問です
ところで、記事のタイトルにある「脱『受験英語』」と言うのは、かなり違和感があるタイトルです。というのも、英検は受験英語とかなり傾向が似ている試験だからです。
ちなみに、記事で言うところの「脱『受験英語』」は、次の部分を指しているものと思われます。
国公私立大学の一般入試で、実用英語技能検定(英検)など民間英語テストの利用が広がっている。
成績が一定レベルであれば英語試験を満点とみなして免除したり、英語試験の点数に加算したりする。文法・読解中心の受験英語から脱却し、実践的な英語力を問う方向の表れで、文部科学省も導入を促している。
英検の場合は確かに、受験英語に比べればリスニングや会話のスキルが重要視されるという特徴はあるでしょう。でも、基本的な問題作成の方向性としては、受験英語とそんなに違わないように感じます。読解も文法も重視です。
英検を取り入れたから脱「受験英語」と言われても、ちょっとクビをかしげてしまいます。まあ、TOEIC やTOEFL を参考にするのなら、脱「受験英語」という言い方をしても良いのかもしれませんけどね。
- 大学入試、脱「受験英語」へ…英検など利用拡大
読売新聞 2015年6月27日 [↩]
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